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【判例紹介】参考文献や書籍に法的効力はあるのか?判例から読み解く書籍の立ち位置を独自の視点で解説!

参考文献や書籍に法的効力はあるのか?判例から読み解く書籍の立ち位置を独自の視点で解説!

確認申請先に「書籍にこう書いてあるから、法適合に疑義がある」と言われました。

書籍に書いてあるからって、 それが法的な根拠になるんですか?

正直、納得できません…

この疑問をスッキリ解決!

💡ズバリ、結論はこちら!

書籍は「法そのもの」ではありません

裁判所も、書籍はあくまで参考資料の一つとして扱います

ただし、判断に影響を与えることもあります

この記事の最後に、これまで行政の現場で携わった経験から得た学びや気づきを紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

今回は「平成27年2月19日判決(平成24年〔行ウ〕第235号 業務停止処分取消請求事件)」を取り上げています。
判決の印象は、切り取り方や要約の仕方によって大きく変わることがあります。ぜひ、原文を直接お読みになることをおすすめします。

引用:「平成27年2月19日判決(平成24年〔行ウ〕第235号 業務停止処分取消請求事件)」

この記事を書いた人

ほぅちゃん

元政令市職員(行政庁) × 確認検査機関の経験者である一級建築士・建築基準適合判定資格者。
建築基準法を中心に、関連する行政法や民法の仕組みも含めて、横断的にわかりやすく解説しています。

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この記事の流れ

判例紹介:一級建築士に対する業務停止処分取消訴訟

【平成27年2月19日/東京地裁判決】業務停止処分取消請求事件

1.事件の概要

この裁判は、一級建築士である設計者が、国土交通大臣から「建築基準法違反の設計を行った」として、3か月の業務停止処分を受けたことに対し、「違反などしていない」と主張し、処分の取消しを求めたものです。

具体的には、設計者は建築基準法施行令121条1項・2項に違反したとされましたが、「自分の設計は法令に適合している」と反論。

さらに、「本件処分は裁量の範囲を逸脱しており、不当かつ違法だ」として、国土交通省を提訴しました。

2.設計者の主張

  • 設計者は、自身の判断が正しかったと主張し、その根拠として『防火避難規定の解説 2005(第6版)』に記載された内容を挙げました。

3.国土交通省の主張

  • 『防火避難規定の解説』という書籍は、建築基準法施行令に対して国が示した正式な解釈指針ではなく、あくまで建築基準関係法令の正当な解釈に適合する限度でのみ参照されるにすぎない。

4.裁判所の判断

  • 本件解説及び本件取扱い法令そのものではなく,また,監督官庁等により発出された通達等でもないこと,そして,本件解説及び本件取扱いの記載内容が,建築基準関係法令の正当な解釈に適合する限度においてのみ参照され得るものであること自体は,国土交通省の主張のとおりである
  • この書籍は、平成6年に当時の建設省住宅局建築指導課の監修のもと、日本建築主事会議が編集・発行した「建築物の防火避難規定に関する運用指針」がもとになっていいる。
  • その後、同課の監修により「建築物の防火避難規定の解説(第3版)」として再編集され、「ツインビル等の避難規定上の取扱い」と題した内容が引き継がれている。
  • 書籍には、平成11年3月当時の同課課長が,「日本建築主事会議では,平成10年の建築基準法の改正にあわせて,建築基準法令等の防火避難関係の規定について,建築主事等が具体的な解釈・運用を図る際に参照すべき標準的な事項を「建築物の防火避難規定の解説」という形でとりまとめました。今後,本書が建築行政関係者はもとより,民間の指定確認検査機関や建築関係業務に携わる多くの方々に積極的に活用されることにより,良質な建築物のストックが確保され,安全なまちづくりの進展に資することを期待します。」として監修のことばとしているように,本件取扱いの内容は,平成6年当時から平成11年3月当時まで,建設省住宅局建築指導課における建築基準法施行令121条1項の解釈を反映していたものといえる。
  • 監督官庁である建設省(現国土交通省)の解釈にも合致する
  • 実際に、本件取扱いを含む本件解説は,特定行政庁や指定確認検査機関が建築士等とやりとりをする際に参照を指導するなど,建築実務においてもよく用いられているものと認められる。
  • 本件解説における本件取扱いの内容は,上記のとおり同施行令121条1項の趣旨に沿うものであるとともに,かつては監督官庁である建設省(現国土交通省)の解釈にも合致するものであり,現在も建築確認業務に携わるものに広く用いられているものといえる

もう少しだけ、わかりやすく整理すると、次のとおりです

  • 「防火避難規定の解説」は、平成6年に建設省住宅局建築指導課が監修した「防火避難規定に関する運用指針」が基になっています。
  • その後、「建築物の防火避難規定の解説(第3版)」として再編集され、「ツインビル等の取扱い」(今回の争点)なども追加されました。
  • 平成11年当時の建設省課長は、「標準的な解釈・運用として、建築行政関係者に参照されることを期待する」と監修の言葉で述べています。
  • 記載内容は、政令第121条に関する建設省(現国交省)の過去の解釈を反映したものです。

  • 実務でも、特定行政庁や確認検査機関が建築士に参照を求める場面が多く、現場で広く活用されています。

判例を踏まえた、書籍の法的位置づけ

「防火避難規定の解説」は法令そのものではありません。

建築基準関係法令の正当な解釈に適合する限度でのみ、参考にされるものです。

ただし、裁判所はこの書籍の内容を正面から否定することはなく、 「監督官庁(当時の建設省、現・国土交通省)の解釈に合致する内容である」と認めました。

結局、この書籍はどういう位置づけと考えればいいんですか?

「防火避難規定の解説」は法令ではないものの、監督官庁の公式解釈と一致する内容であることを、裁判所も認めました。

つまり、「書籍だから無視していい」とまでは言えない、実務でも一定の重みを持つ資料として扱われることを裏付けた判例です。

誤解や疑問にズバリ答えます!

現場でよく聞かれる疑問を、審査の視点でシンプルにお答えします。

法律に書かれていないことなのに、解説本が存在するのはなぜですか?

法文だけではすべてのケースを網羅できないため、法律の趣旨や目的に沿った「解釈」が必要になります。その手助けとして、解説書が存在します。
建築基準法に限らず、あらゆる法律には抽象的な部分があり、すべてを具体的に条文で書くことは想定されていません。

なお、参議院法制局のホームページでも、「法令の規定には、抽象的な面があり、その内容を理解したり具体的な事案に適用したりする場合に「解釈」が必要になることがあります。」と明記されています。

この書籍だけでなく、すべての解説本も同じように扱われますか?

判例を見る限り、書籍ごとに判断が分かれる可能性があります。
内容だけでなく、誰が執筆・監修しているかや、対象となる条文・事件の具体的な状況によって、裁判所の評価は変わると考えられます。
裁判所は、建設省による監修が行われている点を評価しています。そのため、監修者に法律や条例の制定に関与した者が含まれていれば、同様に高い評価を受ける可能性があります。

建築基準法に書いてない内容で、解説本が“規制”になるのは納得できない。

建築基準法に具体的に書ききれていない事項については、解説本を参考に判断しているものです。
規制そのものは建築基準法に規定されており、解説本はその解釈や適用の判断に用いられているに過ぎず、新たに規制を設けているわけではないと考えられます。
たとえば、「防火上主要な間仕切壁」の具体的な範囲については建築基準法に明記されていませんが、「防火避難規定の解説」といった書籍では、例として「3室以下かつ100㎡以下で区画」と示されています。
設計者や審査者はこれを基に、設計や審査を行っているのが実情です。
この「3室以下かつ100㎡以下」という基準は、解説本による新たな規制ではなく、防火上主要な間仕切壁の解釈・判断の一例といえます。

法律に明確に書かれていないのに、解説本で解釈されるのはおかしくない?

法の解釈には、条文の文言通りに読む「文理解釈」だけでなく、趣旨や制度全体から読み解く「論理解釈」もあります。したがって、条文に明確に書かれていない内容が論理解釈によって補われること自体は、法律実務では一般的な考え方です。

行政に携わった経験を踏まえて

ここでは、行政実務に携わった経験をふまえ、現場で得られた知見や気づきをご紹介します。

この判例みたいな考え方は、今後も続いていくんですか?

裁判所は、あくまで具体的な争訟について法を適用し、これを宣言することにより、裁定する国家の作用を担います。

したがって、判断は個別具体的な事件に基づくため、常に同様の結論が導かれるとは限りません。

行政庁や指定確認検査機関の判断に不服がある場合、日本では権利救済の手段として「不服申立て(審査請求)」または「訴訟」を行使するほかありません。

まとめ

裁判所は、法令の文言だけでなく、解説書や監修の有無も参考にすることがある

ただし、書籍はあくまで「法の解釈の参考意見」であり、法そのものではない

判例の内容は、今後の判断に影響を与える可能性はある

行政判断に不服がある場合は、審査請求や訴訟による救済制度を活用することができる

この記事を書いた人
ほぅちゃん

元政令市職員(行政庁) × 確認検査機関の経験者である一級建築士・建築基準適合判定資格者。
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