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既存不適格│検査済証なしで増築できるの?既存建築物の調査と新ガイドラインを解説

検査済証なしで増築できるの?気をつけるポイントと新ガイドラインを解説

この記事では、検査済証がない場合の「既存建築物の現況調査ガイドライン」を解説しています。
ただし、検査済証がある場合でも、このガイドラインを参考に現地調査や現況調査報告書の作成が求められるケースがあります。
検査済証の有無にかかわらず役立つ内容なので、ぜひ参考にしてください。

検査済証がなくても増築できるの?

現地調査や破壊検査は本当に必要?

図面の復元もしないといけないの?

増築の注意点や参考資料を事前に知っておきたい。

検査済証がないと、指定確認検査機関で申請を受けてもらえないって聞いたことあるけど…

この疑問をスッキリ解決!

💡ズバリ、結論はこちら!

国土交通省が公表している「既存建築物の現況調査ガイドライン」が参考になる

現地調査の項目や方法が整理されており、調査方針を立てる際の目安に

また、図面の復元が必要であることも明確に示されている

内容が多いため、事前に一通り目を通しておくと、その後の設計方針の検討がスムーズに進みます

なお、技術的助言により、指定確認検査機関でも増築の確認申請を受けることは制度上可能とされています

この記事の最後に、これまで行政の現場で携わった経験から得た学びや気づきを紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

あわせて確認されることが多い規定

この記事を書いた人

ほぅちゃん

元政令市職員(行政庁) × 確認検査機関の経験者である一級建築士・建築基準適合判定資格者。
建築基準法を中心に、関連する行政法や民法の仕組みも含めて、横断的にわかりやすく解説しています。

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この記事の流れ

検査済証がないけど増築するには?

検査済証がない場合は、確認申請の前に「現地調査」「現況調査報告書」の作成が必要

検査済証がある場合も調査・報告書の作成は必要ですが、簡易な調査で足りるケースも

また、図面が残っていないときは、復元図の作成が求められる

検査済証がない状態で増築したいのです

最初に何から進めればいいのか、全体の流れを知りたいです。

検査済証がない場合は、確認申請の前に、国土交通省のガイドラインに沿って次の準備が必要です。

①図面の復元
②現地調査
③各規定ごとの「適合・不適合・既存不適格」の整理
④現況調査報告書の作成

この記事では、これらの手順とガイドラインの要点をわかりやすく解説します。

国土交通省作成のガイドラインの解説範囲

国交省の「既存建築物の現況調査ガイドライン」って何?

国土交通省は令和7年3月に「既存建築物の現況調査ガイドライン」を公表

従来は、既存建築物の調査範囲や方法が行政庁によって異なり、統一的な基準がなかった

このガイドラインの公表により、適合状況を確認するための手順や調査方法などが明確化

引用「既存建築物の現況調査ガイドライン」

検査済証がない場合は、このガイドラインを参考にして現況調査を進めることが基本になります。

現況調査のガイドラインってのがあるんですね。

昭和から平成初期にかけて建てられた建築物は、完了検査を受けていないケースが少なくありません。

そのため、増築の際に指定確認検査機関が申請を受けてよいか判断に迷うことが多かったようです。

さらに、行政庁ごとに現況調査の範囲や方法が異なっていたため、審査の運用にも差が生じていました。

こうした課題を解消するため、国土交通省が統一的な指針としてガイドラインを策定したようです。

現況調査はどう進める?ガイドラインの流れを紹介

引用:国土交通省 既存建築物の現況調査ガイドライン(概要)

このフローを見ると、現況調査の進め方を一目で理解できます。
まずは全体の流れをつかんで、どの段階で何を行うのかをイメージしておくとスムーズです。

フロー図では、一般的に黄色のルートになるケースが多いです。

調査2-②からは2つの矢印が分かれますが、多くの項目は「適合」または「既存不適格」に分類されます。

ただし、一部の規定では「不適合」と判断される場合もあるため注意が必要です。

特に注意すべきポイントは、筋かい(軸組)や金物の有無、基礎の状況、2項道路のセットバック、建築物の配置、がけ地、附属建築物(車庫・駐輪場・倉庫)などです。

ここからは、フロー図に沿って、各調査項目の進め方を順に解説していきます。

【調査1-①】検査済証の交付状況の調査

まずは検査済証の交付を受けているか確認!

引用:ガイドライン抜粋

まずは、検査済証があるか確認するんですね。

処分等概要書や台帳記載事項証明書で分かるようですが、もしそれらが無いときは、どう判断すればいいですか。

処分等概要書や台帳記載事項証明書で、一般的には検査済証の有無を判断できます。

もし台帳記載事項証明書が無い場合は、次のような対応が考えられます。

① 証明書を持っていない場合 → 行政庁で発行してもらう

② 行政庁で確認したが、台帳に確認申請の記録がなく、証明書が発行できないと言われた場合 → そもそも確認済証を取得していないため、検査済証も存在しない

②のケースでは、確認済証すら無いことになるため、増築を検討している場合は、指定確認検査機関ではなく行政庁に相談するのが安全です。

手続き上の違反にとどまらず、別の法的問題に発展するおそれもあるため注意が必要です。

【調査1-②】工事の着手時の調査

着工日を確認し、既存不適格かどうかを判断するための基準日を確定させる

引用:ガイドライン抜粋

確認申請書の副本も請負契約書もなく、着手日がわかる資料が見つかりません。

登記事項証明書には、着手日って書いてあるんですか?

登記事項証明書には着手日は記載されていません。

ただし、内容によっては既存不適格かどうかを推測できる場合があります。

着手日がはっきりしないときは、増築の確認申請先に早めに相談するのがおすすめです。

引用:法務省 全部事項証明書(不動産登記)の見本

この登記は「令和1年5月1日新築(5月7日登記)」となっています。

たとえば、既存不適格の調査で令和1年8月に法改正があった場合、すでに工事完了済みであるため、不適合ではなく既存不適格と判断できると考えられます。

登記事項証明書をもとに既存不適格を推測してよいか、または確認済証の交付直後に法改正があった場合などは、確認申請先へ事前に相談しておくことをおすすめします。

【調査2】現地調査では何を確認?調査2のポイントを解説

現地で構造や安全性を確認する調査が必須

図面との整合や劣化状況を把握し、適合・不適合・既存不適格を判断するのが目的

引用:ガイドライン抜粋

これまでは準備段階でしたが、ここからが本格的な現地調査のスタートです。

ガイドラインのこの章は情報量が多いため、重要なポイントやよくある質問をQ&A形式でわかりやすくまとめました。

基礎の配筋は破壊検査しないとダメ?

隠れて見えない部分は、原状復旧できる範囲で一部を切り欠いたり、ファイバースコープや計測機器を使ってできる限り確認
ただし、基礎の配筋は非破壊検査で対応できる場合もあります。

引用:ガイドラインP.5
調べられない部分があっても、既存不適格として扱ってもらえる?

適合状況が「不明」となるため、既存不適格の緩和を受けることはできません。

引用:ガイドラインP.5
検査済証があると現地調査は省略できる?範囲はどう変わる?

検査済証があっても、現地調査は必要ですが調査項目は一部に限られます。
一方で、検査済証がない場合は、すべての規定について現地調査が必要になります。

引用:ガイドラインP.5
検査済証がありませんが、旧4号特例で審査(壁量計算)が省略されていた建物は、現地調査や法令適合の調査も省略しても良いですか?

検査済証がないため、審査省略の規定も含めすべての調査が必要です。

引用:ガイドラインP.6
図面がないときは復元が必須?壁量計算書も作り直すの?

法適合性を確認するには、図面や計算書が欠かせません。そのため、これらがない場合は復元が必要になります。壁量計算書も構造の確認に関わるため、復元の対象となります。

引用:ガイドラインP.7
引用:ガイドラインP.26
建築後に用途変更した場合の注意点や扱いは?

ガイドラインP.9に用途変更時の取扱いが整理されています。まずは一度目を通しておくことをお勧めします。
概要としては、現行法への適合状況を確認し、既存不適格かどうか判断する流れです。
用途変更でも、調査の基本方針は変わりません。

引用:ガイドラインP.26

現地調査では何を確認する?チェックリストの使い方を解説

ガイドラインには、調査項目と方法が一覧になったチェックリストが掲載されています。

これを活用すれば、効率的に現地調査を進めることができます。

引用:ガイドラインP.10を一部抜粋・加工

現況調査用にチェックリストがあるんですね。

助かります。

このチェックリストは、主に2階建ての一戸建て住宅を想定した内容です。

以前はこうした整理資料がなかったため、設計者が法令集を見ながら自分で項目をまとめたり、他自治体の公開資料を参考にしていました。

項目ごとに整理されているので、現況調査の抜け漏れ防止にとても役立ちます。

隠蔽部は全数調査が必須ですか?

ガイドラインでは「少なくとも1か所以上」とされており、「全数必要」とは書いてありません。ただし、「1箇所でよいか」とは別の問題なので、増築の確認申請先へ事前に相談しておくと安心です。

引用:ガイドラインP.10

現況調査報告書の作成

現地調査が終わりました。

次の手順は何をすればいいですか?

次は「現況調査報告書」を作成します。

報告書には、調査内容をまとめた書類や添付資料が必要になります。

次のセクションでは作成例について紹介しています。

現況調査報告書の必要書類

引用:ガイドラインP.13

現況調査報告書はどう書く?作成例でポイントをつかもう!

ガイドラインのP.25~P.56に作成例が掲載されています。

事前に目を通しておくと、書類の構成や記載内容のイメージがつかみやすくなります。

引用:ガイドラインP.25~P.56から抜粋

現況調査報告書の作成した後は…?

やっと現況調査報告書が完成しました。

でも、この後はどうすればいいんでしょうか?

次のステップは、増築の確認申請書の作成です。

増築の場合、既存不適格部分の遡及や、そもそも不適合部分は適合させる必要があります。

そのために、どの規定がどちらに当たるのかを判断するため、調査・報告書を作成してきたという流れです。

現況調査報告書を作成した結果、不適合と判明した部分はどう対応すれば良いですか?

不適合と判断された部分は、現行の建築基準法令に適合させる必要があります。
そのため、「不適合部分を是正する前提」で立てることになります。

引用:ガイドラインP.14
調査の結果、既存不適格と判断された場合、増築しても遡及しない認識で正しいですか?

原則としては遡及します。ただし、政令で定められた範囲内の増築であれば、既存不適格として緩和を受けられる場合があります。「政令の範囲」は条文ごとに異なるため、必ず法令集で確認しましょう。

引用:ガイドラインP.14
引用:ガイドラインP.15

どの条文に緩和措置の規定があるのかを一覧にまとめた資料も公開されています。
該当条文を探す際の参考になります。

政令の範囲内の増築であれば既存不適格として扱われるのは分かりましたが、「政令の範囲内」が難しくて理解しづらいです。
分かりやすく解説した資料はありますか?

「国土交通省HP 既存建築物の活用の促進について」「既存建築物の緩和措置に関する解説集」では、各規定ごとに、既存建築物として引き続き扱うための“政令で定める増築の範囲”が解説されています。審査側・設計者側のどちらにとっても非常に参考になる資料です。

引用:国土交通省 既存建築物の緩和措置に関する解説集
現況調査報告書は、どこに提出すればいいんですか?

現況調査報告書は増築の確認申請の添付図書として活用することができます。確認審査の際に、既存部分の法適合状況を確認する重要な資料となります。

引用:ガイドラインP.15

よくある誤解や疑問にズバリ答えます!

現場でよく聞かれる疑問を、行政実務や審査の視点でシンプルにお答えします。

既存不適格を調べたいのですが、各規定の改正時期が分かりません。どう確認すればよいですか。

ガイドラインP.18の「既存不適格早見表」で確認できます。時系列と規定ごとに整理されており、改正時期の把握に有用です。

引用:ガイドラインP.18
ガイドラインは2階建て住宅を想定しているようですが、構造計算が必要な建物(ルート1〜3)はどう扱えばいいですか?

参考になるものを公開している行政庁があるため、調査方針の参考になるかもしれません。しかしながら、方針の参考程度なもので、最終的には確認申請先と相談が必要です。
なお、以下の参考資料はガイドラインが公開される前に作成されたものであるため注意が必要です。

①神奈川県建築行政連絡協議会 構造部会
「検査済証等の交付を受けていない建築物の増築等のための適法性の判断に関する取扱い要領 ~法第20条関係~」


②一般社団法人東京都建築士事務所協会 :「建築構造設計指針」
第11章「構造審査要領」(監修:東京都建築構造行政連絡会)

行政に携わった経験を踏まえて

ここでは、行政実務に携わった経験をふまえ、現場で得られた知見や気づきをご紹介します。

指定確認検査機関に相談したら、「行政庁に聞いてください」と言われました。

検査済証がないと、確認申請は受けてもらえないんでしょうか?

技術的助言によれば、制度上は指定確認検査機関でも確認申請を受けることができます。

ただし、あくまで制度上の話です。

実際の運用は確認検査機関で異なるため、事前に相談して手続きを進めるのが安心です。

引用:既存建築物の確認審査等の円滑な運用について(技術的助言)

まとめ

検査済証がない場合はガイドラインに基づき「現地調査」と「現況調査報告書」の作成が必須

図面がない場合は復元図の作成も求められる

技術的助言により、指定確認検査機関でも申請は制度上可能

ただし、実際の対応は確認検査機関ごとに異なるため、事前相談が重要

あわせて確認されることが多い規定

この記事を書いた人
ほぅちゃん

元政令市職員(行政庁) × 確認検査機関の経験者である一級建築士・建築基準適合判定資格者。
建築基準法を中心に、関連する行政法や民法の仕組みも含めて、横断的にわかりやすく解説しています。

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