この記事は、「屋上の手すりを日影図に含めるか」に関する内容です。
「日影規制の対象となるかの判定に手すりを高さに含めるか」の記事ではありません。

日影規制で、屋上の手すりも影が発生する?
行政庁の取り扱いが異なるって本当?
根拠となる参考文献はあるの?
この疑問をスッキリ解決!
💡ズバリ、結論はこちら!
屋上の手すりを日影図の作図対象とするかは申請先(行政庁・指定確認検査機関)の判断によって異なる
国土交通省からは明確な通達は出ていない
「数センチの細い棒状のものは明瞭な形の日影は生じない」とする参考文献がある



この記事の最後に、これまで行政の現場で携わった経験から得た学びや気づきを紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事を書いた人


元政令市職員(行政庁) × 確認検査機関の経験者である一級建築士・建築基準適合判定資格者。
建築基準法を中心に、関連する行政法や民法の仕組みも含めて、横断的にわかりやすく解説しています。
▶ 運営者情報を見る
日影規制の屋上手すり問題とは?
屋上に設置された手すりが日影規制の作図対象かどうかは、行政庁・指定確認検査機関の判断により異なる
クリアランスに余裕がない場合、後から発覚すると手戻りが生じる



屋上の手すりを日影規制の作図に含めずに申請した経験があります。
しかし、別の敷地で確認申請を出した際、「手すりも含めて日影図を作成してください」と言われ、困ったことがあります。



屋上の手すりが日影規制の作図対象に含まれるかどうかは、行政庁や指定確認検査機関によって異なります。



手すりを含める・含めないかで日影の範囲が大きく変わります。



日影規制に余裕がないときは、手すりの影で規制値を超えてしまうことがあります。
その場合、後で発覚すると手すりの位置変更や取りやめが必要になり、手戻りが発生する原因となります。
行政庁の取り扱いは?



行政庁ごとの取り扱いをまとめました
| 行政庁 | 取り扱い |
|---|---|
| 新宿区 高さ制限における屋上等のパイプ手すりについて | パイプ手すりを含んだ建築物の全ての部分の日影が、規制対象となる。 影が発生する |
| 中野区 高さ制限における屋上や途中階のパイプ手すりについて | 高さ算定で日影規制対象となった場合は、手すりも建築物の高さに算入する 影が発生する |
| 堺市 日影による中高層の建築物の高さの制限 | 屋上に設けられる手すり等で開放性が高いものは日影図の作図対象としない 影は発生しない |
| 練馬区 日影規制の取扱い | 令第2条第1項第6号ロおよびハで規定される屋上部分の一定規模以下の塔屋あるいは建築設備、手摺等の軽微な屋上突出物は除外できるが、規制対象となった場合には令第2条第1項第6号ロおよびハで規定される部分を含めた建築物のすべての部分で 日影図を作成しなければならない。なお、看板等の建築物に該当しない工作物につ いては、日影規制は適用されない。 影が発生する |
| 神戸市 神戸市建築主事取扱要領 第9版 77 -ⅲ-13 日影規制の対象となる部分 | 手すりについては、概ね手摺子の直径又は対角線の長さの10倍以上の有効空きがあるものに限り、対象とならない。(本取扱いは、法第56条の2に基づき日影による高さの制限を受ける建築物について、日影 図を作成するにあたっての取扱いを定めるものである。) 影は発生しない |
| 京都市 京都市建築法令実務ハンドブック集6-2 日影の検討対象とする建築物の高さ | 「総5-3 高さに算入しない屋上突出物」を満たす格子状又はルーバー状の手すり等は、日影の検討対象とする建築物の高さに算入せず、また、日影を生じさせないものとして取り扱うため、日影の検討に含める必要はない。 影は発生しない |
| 群馬県 群馬県建築基準法例規・事例集R6.4.1 P.211/268 | 事例:建築物の屋上の手摺、ネットフェンス、テニス用のネット囲い等は、日影規制の対象となるか 回答:ネット、金網等、光の透過性が高いものは、対象としない。 ただし、パンチングメタル等、透過性の低いものは規制の対象とする。 影は発生しない |



取り扱いが異なりますね



国土交通省からの技術的助言や通達がないため、取り扱いが異なっています。
過去の参考となる文献は?



参考になる文献はありませんか?



昭和53年に発行された文献には、次のように書かれています
なお、雨樋や避雷針などのように数センチの細い棒状のものは、太陽の見かけの大きさよりも小さいので、事実上明瞭な形の日影は生じません。
したがって、これらは、建築物・建築設備の部分ではあっても、日影の計算に入れる必要はないでしょう、
というのは、太陽の見かけの直径は、視角約30′で、10m 離れたところにある9cm以下の細い棒は、太陽より小さく見えて、太陽を覆うことはないからです。
引用:だれにもわかる日影規制とその対策 オーム社



これだけ読むと、日影図の作成に含めないと解釈できます。



次のセクションで、この文献も含めて深堀りしたいと思います。
どの取り扱いが正しい?



最終的に、どの取り扱いが正しいのでしょうか



まず、手すりを含めるか・含めないかについて、それぞれの主張を整理します
手すりも日影図の作図対象とする考え
| 好ましい点 | 問題点 |
|---|---|
| 法文どおり建築物の一部として作図 | 実際には影響が軽微なため、過度な解釈となる可能性がある |
手すりは日影図の作図対象にしない考え
| 好ましい点 | 問題点 |
|---|---|
| 実際には影響が軽微ため、実情に即した検討 「だれにもわかる日影規制とその対策」の文献に、計算に含めないと明記されている この文献の著者は日照基準専門委員会の委員 | 法律上、検討不要とは解釈できない(手すりも建築物の一部) 国土交通省から見解は示されていない 文献に「事実上明瞭な形の日影は生じません」と書いてあるとおり、影が明瞭でないだけで、影が生じることには変わりない 参考文献はあくまで委員の個人的な見解であり、当時の建設省の公式見解とは一致しているとは限らない |



どちらの主張にもメリットと問題点があるんですね



残念ながら、国土交通省から明確な解釈が示されていないため、統一された結論を出すことはできません。
実務上は、確認申請先に従って日影図を作成するのが確実です。
行政に携わった経験を踏まえて



今設計している物件は、屋上の手すりを含めると日影規制に抵触しそうです。
申請先からは「屋上の手すりも含める」と言われていますが、参考文献を基に覆すことはできるのでしょうか。



「文献は委員個人の見解であり、当時の建設省の考えと一致しているとは限らない」と指摘される可能性が高いです。
また、申請先は「手すりを含める」として、社内(行政庁内)で統一して審査している場合が多く、国土交通省から明確な根拠資料が示されない限り、判断を変えるのは難しいと考えられます。



この委員会は当時の建設省に意見を提出しているため、日影規制の検討に関わっています。
委員会の考えが日影規制や法律の制定に反映されたのでは?



日照基準専門委員会は諮問機関であり、参与機関ではありません(建設省を拘束する立場にはありません)。
そのため、委員会の答申に対して建設省は拘束されることはなく、見解が一致するとは限りません。
また、委員会の考えが日影規制や法律の制定にどの程度影響したのかは、明確ではありません。



屋上の手すりは高さに含めますか



一般的には高さに含めませんが、高さに含める行政庁もあるようです。
屋上に設けられる手すり等で開放性が高いものは令第2条第1項第6号ハに規定する「棟飾、防火壁の屋上突出部その他これらに類する屋上突出物」として高さに算入しない。
と判断する行政庁が多いです。
なお、同文献には次のとおり記載があります。
金網や鉄柵でできている手すりなどのように、採光や通風の障害がないものや、煙突などは高さに算入しなくてよい、また、むね飾り、防火壁の屋上突出部も算入する必要はありません。
引用:だれにもわかる日影規制とその対策 オーム社
まとめ
屋上の手すりを日影図の作図対象とするかは行政庁や指定確認検査機関の判断によって異なる
国土交通省からは明確な根拠は出ていない
元政令市職員(行政庁) × 確認検査機関の経験者である一級建築士・建築基準適合判定資格者。
建築基準法を中心に、関連する行政法や民法の仕組みも含めて、横断的にわかりやすく解説しています。
▶ 運営者情報を見る










