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日影規制はなぜ「5m」「10m」なのか?|5m以内の住人は守られない建築ルールの意外な盲点

日影規制はなぜ「5m」「10m」なのか?|5m以内の住人は守られない建築ルールの意外な盲点

なぜ、日影規制は5mと10mの2種類で検討する必要があるの?


5mだけでは不十分?


5m以内に近接している人の日照は確保されない?

この疑問をスッキリ解決!

💡ズバリ、結論はこちら!

近隣に2棟、3棟並んだ場合でも、北側の敷地には一定の日照が保全されるよう、10mの位置での検討が必要


5mだけの検討では、日照が保全されるとは限らないためである


5m以内は日影規制の対象外なので、紛争が生じた場合は民法で裁判となる

この記事の最後に、これまで行政の現場で携わった経験から得た学びや気づきを紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

この記事を書いた人

ほぅちゃん

元政令市職員(行政庁) × 確認検査機関の経験者である一級建築士・建築基準適合判定資格者。
建築基準法を中心に、関連する行政法や民法の仕組みも含めて、横断的にわかりやすく解説しています。

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この記事の流れ

日影規制はなぜ5mと10mの検討が必要?

日影規制は、5mと10mの2種類での検討が必要になっています。

5mの規制だけでは不十分なの?

どうして2種類もあるの?

日影規制を整理すると、日影規制は、2つの検討が必要です。


①敷地境界線から水平距離で5m以上10m未満の範囲
②10mを超える範囲

①と②それぞれの範囲に規制時間以上建物の影を生じさせてはいけません。

確かに①だけの規制でもよさそうに見えますが、②を考慮する理由は、文献にこう書かれています。

<規制日影時間が2本建になっているのはなぜか>

建築物に近い部分での日影時間を規制するのは、対象建築物が生じる日影だけを対象にして規制を行うものです。

一方、市街地では、中高層建築物が近隣の土地にも二、三棟は建ち並ぶことが十分予想されますから、市街地の環境を公法で規制し保全しようとするこの日影規制の建前からすれば、


単に対象建築物が生じる日影だけを規制しておけば良いのではなく、隣地に建ち並んだ場合でも、北側の住宅にはある程度の日照が保全されるように、考慮しておかなければなりません。


引用:『だれにもわかる日影規制とその対策』 オーム社

ちょっと難しくて、よくわからないです…

黒丸の点の位置を例として、日影の時間がどのように変化するか解説します。

隣の敷地に別の建物が建つと、黒丸の位置の日影時間が次のように増えます。

あれ?


隣の敷地に別の建物が建つと、同じ位置なのに日影が1時間増えました。


敷地ごとの日影規制だと、隣に建物が建つと、損する敷地が出てきますね。

このような考慮から、建築物から少し離れた場所(10mの位置)でも日影があまり生じない場所で、複合日影の規制値を定める方針としています。


そのため、敷地境界線から10mを超える範囲でも日影時間を制限することになっています。


つまり、
「①敷地境界線から5m以上10m未満の範囲」だけでなく、
「②10mを超える範囲」にも規制することになっています

5m以内に近接している人の日照は確保されない?

5m以内に近接している人の日照は、確保されないのでしょうか?

5m以内に近接している人は、日影規制の対象外です。


文献では、次のような考えがありました。

隣家が境界線より5m以内にあって接近しているときは、その隣家は長時間にわたって日影の中に入ってしまうことになりますが、そのようなことになっても、この日影規制では対象外の問題と考えられています。

この状況で紛争が生じれば、それは、地方公共団体の紛争処理機関や、民法による裁判の扱いに委ねることになります。


引用:『だれにもわかる日影規制とその対策』 オーム社

文献の記述だけを見ると、5m以内の取り扱いに疑問を抱く方もいる気がします

当時の制度設計には様々な議論があったようで、現在の視点では異なる考え方もあり得ます。


それでも、国会では5m以内の日影について激論があったようです。

<会議録の質問と回答のまとめ>
質問者:国会議員
回答者:建設省

質問: 今回の改正案で敷地の境界線からの日影のはみ出し許容距離を5mとした根拠は何ですか?
回答: 平均的な住宅地を考慮し、住宅が建つ場合におおよそ5m程度の南庭が確保できると想定したため、測定基準として5mを採用しました


質問: これは単なる言い訳ではないか?実際、京阪神では8割の住宅が5m以内に収まるというデータがある。それでも5mに統一する理由は何か?
回答: 5mの基準は一律で設定されていますが、実際に5mの範囲内でも影が全くないわけではありません。隣が空き地であれば、5m内でも影が3時間以上出ないような規制が施されており、どのケースでも日照が確保されるようになっています。

引用:第78回国会 参議院 建設委員会 第5号 昭和51年10月28日 会議録 P.17

大阪市や都心では、5m程度の庭があるとは考えにくいです。


例えば、東京都の大規模共同住宅では、計画次第で窓先空地により、結果的に5m程度の空間が確保される場合もありますが。

5mという基準については、当時から様々な見解が示されていたようです。


どのケースでも「日照が確保される」とは言い難いです。


一方で、「日照がまったく確保されない」とも言えないので、5mという設定はやむを得なかったと思われます。

行政に携わった経験を踏まえて

ここでは、行政実務に携わった経験をふまえ、現場で得られた知見や気づきをご紹介します。

測定面が1.5mと4mなのは、1階と2階の窓の中心だと聞きました。


1.5mの一律で規制してもよかったのでは?


なぜ立法時に、2種類の測定面を許容したのでしょうか。

確かに2階の窓を基準に測定面を4mにして日影規制をかけると、1階の日影はどうなるのか、という疑問は自然です。


この点について、文献には次のように説明されています。

このように、地域によって測定水平面の高さに差を設けたのは、第1種住居専用地域以外の地域における1階のレベルでの日影規制の実行は、現在の都市の土地利用状況から判断するとやや無理が生じ、2階のレベルで規制した方が実際的なものになる、と結論づけられたからです。


すなわち、現状調査の結果からみて、このように定めないと、日影規制を制定した以前に、既に建っている多数の建築物が新しい法の枠から外れることになり、新法による建築物が、多くの既存建築物にくらべて非常に不利な規制を受けることになるという、不公平を生じてしまうことを避けたわけです。



引用:『だれにもわかる日影規制とその対策』 オーム社

つまり、既存と新築の建物で不公平が生じるということですね。


測定面を4mとした場合、1階部分の日影への影響がどの程度配慮されているのかが気になるところです

当然、当時の国会でも同様の質疑が行われました。


会議録をまとめると、
「建設省はシミュレーションの結果、測定面を4mにしても1階に日が当たるので、基準として4mを採用した」
とのことです。


確かに、測定面を4mとして規制したからといって、1階が永久日影になるわけではありません。


妥当かどうかは意見が分かれますが、建設省はシミュレーションや検討を重ねて改正法案を提出したようです。


参考:第78国会 参議院建設委員会議録第5号 P.7

まとめ

近隣に2棟、3棟立ち並んだ場合でも、北側の住宅には一定の日照が保全されるよう、10mの位置での検討が必要


5mのみの検討では、日照が保全されるとは限らないためである


5m以内は日影規制の対象外なので、日照に関する問題は、個別の紛争解決制度や民法上の手続きで扱われることがある

この記事を書いた人
ほぅちゃん

元政令市職員(行政庁) × 確認検査機関の経験者である一級建築士・建築基準適合判定資格者。
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