建築行政といえば、現在は特定行政庁です。
建築基準法に基づき、市役所や都道府県の建築指導課などが窓口となり、確認や指導、調査を行うのが一般的です。建築に関する相談があれば「まず行政庁へ」という感覚は、いまでは当たり前になっています。
しかし、この仕組みが整ったのは、実は戦後に建築基準法が制定されてからの話です。
昭和25年に建築基準法が施行され、建築行政は行政庁が担うものとして制度的に整理されました。それ以前、大正から昭和初期にかけては、現在とはまったく異なる体制がとられていました。
建築行政を担っていたのは、警察だった
当時、建築行政を担っていたのは、なんと警察です。
大正8年に市街地建築物法が制定されると、都道府県警察の内部に「建築警察」と呼ばれる体制が設けられました。警察組織の中に建築課のような部署が置かれ、建築の許可や取締りを担当していたのです。
今の感覚からすると意外に思えますが、当時は無秩序な建築による都市の混乱を防ぐことが主な目的でした。市街地建築物法以前にも、都道府県によっては独自に「建築取締規則」を定めており、治安や秩序の維持と一体で警察が所管することは、当時としては自然な流れだったのかもしれません。
なお、建築警察事務は事務量の増大などを背景に、昭和18年に他部局へ移管されています。警察が建築行政を担っていた期間は、振り返るとそれほど長くはありませんが、現在の制度を知る立場からすると、どこか不思議な感覚を覚えます。
ちなみに大阪府では、明治時代に全国に先駆けて独自の建築警察制度がスタートしており、日本の建築行政史の中でも早い段階から先進的な取り組みが行われていました。
