建築基準法における「建築物」の定義は、条文上は比較的シンプルです。
「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱又は壁を有するもの」と規定され、門や塀、観覧のための工作物、地下・高架内の施設なども含まれる広い概念とされています。
ところが、「これに類する構造のものを含む」という文言は、制定当初から存在していたわけではありません。平成4年前後の判例を契機として、法文上に明記されるに至った経緯があります。
当時、パンチングメタル構造の自走式駐車場が建築物に該当するかが争われ、広島地裁において「建築物には当たらない」との判断が示されました。これにより、従来実務上は建築物として取り扱っていた構造物の法的位置づけが不明確となる懸念が生じました。
判例を契機とした条文追加の整理
その結果、解釈の揺らぎを抑えるため、「これに類する構造のものを含む」という文言が法改正により条文上に明示されました。単なる表現の補強ではなく、適用範囲を安定させるための立法的整理といえます。
建築物の定義は一見変わらないように見えますが、その背後には判例を受けた法技術的な補強が存在します。

