この記事では、建築基準法第35条の3に基づく「採光無窓の居室」の区画緩和について解説します。法第28条や政令第19条の絶対採光の緩和については、別記事で取り上げています。

採光窓、どうしても取れない…。
このままだと無窓居室になって、壁も天井も耐火構造や不燃材料にしないといけないの?
緩和規定があるなら、事前に確認しておきたい。
この疑問をスッキリ解決!
💡ズバリ、結論はこちら!
採光のない居室は、原則として不燃材料または耐火構造で区画が必要。
ただし、国の告示で定める条件を満たせば、区画の義務が緩和される。
緩和規定は2種類あり、どちらか一方を満たせばOK。



採光無窓の居室は、不燃材料または耐火構造で区画する必要があります。
特に木造では、不燃材料による区画は難しく、耐火構造も現実的ではないため、設計上の大きな負担になります。
鉄骨造やRC造でも、区画の仕様を満たすために工事費が大きく膨らむことがあります。
こうしたケースで検討したいのが、令和2年告示第249号による区画の緩和規定です。
木造で無窓の居室を計画する場合や、コストを抑えたいときに、有効な選択肢となります。
この記事を書いた人


元政令市職員(行政庁) × 確認検査機関の経験者である一級建築士・建築基準適合判定資格者。
建築基準法を中心に、関連する行政法や民法の仕組みも含めて、横断的にわかりやすく解説しています。
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採光のない居室は、耐火構造や不燃材料で区画が必要?
採光のない居室は、「耐火構造」または「不燃材料」で区画する必要があります(建築基準法第35条の3)
ただし、国土交通大臣が定める告示に基づき、一定の要件を満たす場合には、この区画義務は緩和される



採光って絶対必要だと思っていました
窓がなくても一定の条件で認められる規定があるんですね



採光に関する規定は、建築基準法第28条(政令第19条)、第35条、第35条の2の3つに分類されます。
このうち、いわゆる「絶対採光」と呼ばれるのは第28条(政令第19条)の規定です。
この記事では、第35条の3に基づく採光無窓の居室に関する緩和措置を取り上げます。
無窓居室の位置づけと関係条文を図解で整理


この順番で読むとわかりやすい!緩和の根拠条文を確認!
採光無窓居室の緩和規定は、建築基準法・施行令・告示の3段階で構成されています。
具体的には、「法第35条の3 → 施行令第111条 → R2告示第249号」の順に定められており、内容を把握するには、この順に確認するのが効果的です。
建築基準法第35条の3(無窓の居室等の主要構造部)
(無窓の居室等の主要構造部)
第35条の3 政令で定める窓その他の開口部を有しない居室は、その居室を区画する主要構造部を耐火構造とし、又は不燃材料で造らなければならない。ただし、別表第1(い)欄(1)項に掲げる用途に供するものについては、この限りでない。
建築基準法施行令第111条(窓その他の開口部を有しない居室等)
建築基準法施行令を一部抜粋
(窓その他の開口部を有しない居室等)
第111条 法第35 条の3の規定により政令で定める窓その他の開口部を有しない居室は、次の各号のいずれかに該当する窓その他の開口部を有しない居室(避難階又は避難階の直上階若しくは直下階の居室その他の居室であつて、当該居室の床面積、当該居室からの避難の用に供する廊下その他の通路の構造並びに消火設備、排煙設備、非常用の照明装置及び警報設備の設置の状況及び構造に関し避難上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準に適合するものを除く。)とする。
一 面積(第20条の規定により計算した採光に有効な部分の面積に限る。)の合計が、当該居室の床面積の20分の1以上のもの
二 直接外気に接する避難上有効な構造のもので、かつ、その大きさが直径1メートル以上の円が内接することができるもの又はその幅及び高さが、それぞれ、75センチメートル以上及び1.2メートル以上のもの
2 ふすま、障子その他随時開放することができるもので仕切られた2室は、前項の規定の適用については、1室とみなす。
R2年告示第249号第1号による緩和 令和2年4月1日施行
R2年告示第249号第2号による緩和 令和5年4月1日施行
告示は条文が長く、読みにくいため、ご自身の法令集にアンダーラインを引きながら確認するのがおすすめです。



採光が取れない居室は、原則として耐火または不燃で区画が必要です。
ただし、告示により条件を満たせば、区画が不要になる場合があります。
緩和基準は2種類あり、いずれか一方を満たせば適用可能です。
この基本的な流れを押さえておきましょう。
採光が取れない居室の区画ルールと緩和のしくみ
建築基準法第35条の3に基づく採光無窓居室であっても、告示による緩和基準を満たす場合は、耐火構造または不燃材料による区画は不要とされます。
この告示には、2つの緩和基準が定められており、いずれか一方を満たせば適用が可能です。
① 令和2年国土交通省告示第249号 第1号(令和2年4月1日施行)
② 令和2年国土交通省告示第249号 第2号(令和5年4月1日施行)



令和2年に初めて緩和規定が告示されました。
令和5年には新たな基準が追加され、2つの選択肢がある状態です。
どちらか一方を満たせば、緩和の適用が可能です。
①R2年告示第249号第1号による緩和 R2.4.1施行



まずは1号(令和2年施行)の緩和基準から見ていきましょう。
居室が以下のすべてに当てはまること。
1.居室は就寝室(寝室や宿直室など)でないこと
2.以下のいずれかに該当すること
(1)居室の床面積が30㎡以内
(2)避難階にある居室の場合
居室の各部分から屋外への出口まで歩行距離が30m以下とする
(3)避難階の直上階 or 直下階にある居室の場合
居室の各部分から避難階における屋外への出口まで20m以下とする
居室の各部分から屋外避難階段まで歩行距離が20m以下とする
3.自動火災報知設備を設けること



間違えやすいですが、自動火災報知設備は、住宅に設置される「住宅用火災警報器」とは異なる設備です。
※今回必要とされるのは「報知設備」です。名称は似ていますが、「警報器」と「報知設備」は別物であり、機能も異なります。
この設備は住宅に設置されるものではないため、①R2年告示第249号第1号の緩和基準は、主に中規模以上の事務所や店舗などに設けられる小規模な居室において利用されることが多いです。
ここでおさらい!自動火災報知設備とは?
引用;一般社団法人日本火災報知機工業会 自動火災報知設備とは 自動火災報知設備は、以下のような機器で構成されています。
- 受信機
- 中継器
- 発信機
- 表示灯
- 感知器
- 音響装置
自動火災報知設備の中心となるのが「受信機」です。
感知器が火災の兆候をとらえると、その信号が受信機に送られ、警報ベルの作動やシャッターの閉鎖といった一連の対応が自動で行われます。加えて、消防機関や警備会社への通報機能を備えているものもあります。火元の位置がすぐに把握できる表示機能を備えたタイプもあり、ビルやマンションなどの管理人室や防災センター室に設置されるのが一般的です。



このような設備は、戸建て住宅には通常設置されていません。
戸建て住宅にあるのは、あくまで住宅用火災警報器です。
①令和2年告示第249号第1号の緩和基準は、一見すると簡単に適用できそうに思えます。
しかし、消防法上、自動火災報知設備の設置義務がない用途の建築物では、実際には適用が難しいのが現実です。
新たに報知設備を設ける負担を考えると、不燃材料で区画する方が現実的な場合もあります。
一方で、もともと自動火災報知設備の設置が義務づけられている建築物であれば、この緩和基準を満たすのは非常に容易です。
②R2年告示第249号第2号による緩和 R5.4.1施行



追加されたもう一つ目の緩和基準について解説します
7つの条件すべてを満たす必要があります
(クリックで各項目の解説にスライドします)
1.居室の利用条件
・居室は「自力避難困難者」が使用しないこと
・「就寝室(寝室・宿直室等)」でないこと
2.居室から直通階段に至る廊下の区画(いずれか)
(1)不燃区画+遮煙性能を有する防火設備
・廊下等が、不燃材料で造り又は覆われた壁で区画
・令第112条第19項第2号(遮煙性能を有する常閉・随閉)に規定する戸で区画
(2)スプリンクラー設置
・廊下と隣接室にスプリンクラー設備等を設けること
(ただし、火災のおそれの少ない室を除く。)
3.直通階段の構造(いずれか)
(1)階段を以下で区画すること(竪穴区画)
・準耐火構造の床または壁
・遮煙性能を有する防火設備(常閉・随閉)
(2)直通階段が以下の両方に該当すること(屋外階段+遮煙防火設備)
・屋外に設けること
・屋内から直通階段に通ずる出入口は、遮煙性能を有する防火設備(常閉・随閉)
4.避難階において、階段から出口に通ずる廊下等を以下で区画
・廊下等を「火災の発生のおそれの少ない室」とすること
・準耐火構造の床または壁
・遮煙性能を有する防火設備(常閉・随閉)
※「火災のおそれの少ない室」とは壁・天井を準不燃材料で仕上げる
※スプリンクラーを設置する場合、準不燃材料の仕上げは不要
5.居室から直通階段に通ずる廊下等の仕上げ
・廊下を「火災のおそれの少ない室」とすること(壁・天井を準不燃材料で仕上げ)
・ただし、次の両方を満たす場合は仕上げ不要
①不燃材料の壁・戸で区画していること
②告示に定める歩行距離計算式を満たしていること
6.非常用の照明設備の設置
・次の部分に非常用の照明設備を設けること
- 居室
- 居室から地上に通ずる廊下等
※採光上有効に外気に開放された部分については、設置不要
7.自動火災報知設備を設けること



第2号の緩和基準は、第1号と違って、条件がたくさんあるんですね
読むと、複雑そうな内容です。



確かに第1号と比べると、条件が多い上に読みにくい告示基準です。
7つの条件のポイントを一つずつ解説します
1.緩和を受けるための「居室」の条件とは?
条件の概要
1.採光無窓の居室は、避難困難者の利用がないこと、就寝室でないこと
告示の基準を再チェック
1.居室の利用条件
・居室は「自力避難困難者」が使用しないこと
・「就寝室(寝室・宿直室等)」でないこと



次のような居室は、告示の緩和対象になりません。
避難困難者や就寝用の部屋は、特に注意が必要です。
<緩和対象外となる居室の例>
・就寝室(寝室、宿直室など)
・病院
・診療所(入院施設があるものに限る)
・児童福祉施設等
(デイサービスなど、通所のみに利用される施設は緩和の適用OK)
・地階にある室
2.避難ルートとなる廊下の区画要件とは?
条件の概要
2.居室から直通階段までの廊下は、一定の区画条件を満たす必要がある
告示の基準を再チェック
2.居室から直通階段に至る廊下の区画(いずれか)
(1)不燃区画+遮煙性能を有する防火設備
・廊下等が、不燃材料で造り又は覆われた壁で区画
・令第112条第19項第2号(遮煙性能を有する常閉・随閉)に規定する戸で区画
(2)スプリンクラー設置
・廊下と隣接室にスプリンクラー設備等を設けること
(ただし、火災のおそれの少ない室を除く。)



階段までの避難経路が、煙や火からしっかり守られている状態を想定しています。
この「区画の条件(基準2)」と、「内装制限(基準5)」は、別の基準なので混同しないよう注意しましょう。
ポイント
・壁は天井裏まで立ち上げることが必要
・ただし、天井を不燃材料で造るか覆われたものとすれば、壁は天井面まででOK
・区画貫通処理は不要
・不燃区画について、床の耐火性能は求められていません。
・スプリンクラー設備等には、パッケージ型自動消火設備は含まれない
3.直通階段の区画条件を確認しよう
条件の概要
3.直通階段は、竪穴区画または屋外階段のいずれかとすること
告示の基準を再チェック
3.直通階段の構造(いずれか)
(1)階段を以下で区画すること(竪穴区画)
・準耐火構造の床または壁
・遮煙性能を有する防火設備(常閉・随閉)
(2)直通階段が以下の両方に該当すること(屋外階段+遮煙防火設備)
・屋外に設けること
・屋内から直通階段に通ずる出入口は、遮煙性能を有する防火設備(常閉・随閉)



安全性の高い階段で避難を確保します。
竪穴区画が要求される建築物であれば、自動的に適合させることができます。
階段を屋外に設置できるのであれば、屋外階段の方が手軽に使えます
4.避難階における廊下の必須条件
条件の概要
4.避難階の廊下は準不燃材料+防火区画とする
告示の基準を再チェック
4.避難階において、階段から出口に通ずる廊下等を以下で区画
・廊下等を「火災の発生のおそれの少ない室」とすること
・準耐火構造の床または壁
・遮煙性能を有する防火設備(常閉・随閉)
※「火災のおそれの少ない室」とは壁・天井を準不燃材料で仕上げる
※スプリンクラーを設置する場合、準不燃材料の仕上げは不要



基準4は「内装制限」と「防火区画」の両方を求める内容です。
避難階に設ける廊下に対する要件であるため、他の階に比べてより厳しい基準が設けられています。
5.火災のおそれの少ない廊下とみなすための条件
条件の概要
5.廊下等を火災の発生のおそれの少ない室(準不燃材料仕上げ)とすること
告示の基準を再チェック
5.居室から直通階段に通ずる廊下等の仕上げ
・廊下を「火災のおそれの少ない室」とすること(壁・天井を準不燃材料で仕上げ)
・ただし、次の両方を満たす場合は仕上げ不要
①不燃材料の壁・戸で区画していること
②告示に定める歩行距離計算式を満たしていること



この基準5は、主に廊下の内装制限に関する要件です。
火災の発生のおそれの少ない室とは、先ほどの基準4と同じです。
6.非常用照明を設置する際の範囲
条件の概要
6.非常用照明を居室と廊下に設置すること
告示の基準を再チェック
6.非常用の照明設備の設置
・次の部分に非常用の照明設備を設けること
- 居室
- 居室から地上に通ずる廊下等
※採光上有効に外気に開放された部分については、設置不要



通常の非常用照明設備のことです。
本告示用に特別な機能を求められているわけではありません。
7.自動火災報知設備の設置
条件の概要
7.自動火災報知設備を設けること。
告示の基準を再チェック
7.自動火災報知設備を設けること



自動火災報知設備は建築物全体に必要となります。
「採光無窓の居室のみ設置」というわけではありません。
そもそも自動火災報知設備の設置が義務付けられていない場合、設置のハードルはやや高いかもしれません。
(工事費が増額になるため)
国の考え方を技術的助言・パブコメで確認!
法改正の意図を読み解くための参考資料一覧
① 国土交通省が公表した改正スライド資料
② 技術的助言
③ パブリックコメントの結果概要
① 国土交通省が公表した改正スライド資料
採光無窓居室に関する主要構造部の耐火要件の見直し(国交省概要)
引用:国土交通省 施行令第111条 主要構造部を耐火構造等とする無窓居室の範囲の合理化 P.2
② 技術的助言(国交省が示す基本的な考え方)
引用:建築基準法施行令の一部を改正する政令等の施行について(技術的助言) P.7/9~
国住指第536号 国住街第 244号 令和5年3月24日不燃材料で作り又は覆う壁や戸について詳しく解説している、数少ない資料の一つです。
③ パブリックコメントの結果概要
引用:政令の一部を改正する政令の施行に伴う関係告示の規定の整備に関する意見募集の結果 P.6~ 本資料では、告示策定に際しての国土交通省の基本的な考え方や方針が示されています。制度の背景や趣旨を理解するために、一読する価値があります。
行政に携わった経験を踏まえて



この告示基準って、実際どれくらい使われているんですか?



実務の現場では、中〜大規模建築物での活用事例が増えてきているようです。
一方で、小規模な建築物では適用事例は少なめです。というのも、小規模建築では多くの居室が外壁面に面しており、そもそもこの基準を使う必要性があまりないためです。
また、中~大規模建築物でも、内部側の部屋は採光の必要がない倉庫やトイレとして最初から設計されることが多く、すべての建築物で恩恵があるわけではありません。
それでも、緩和基準ができたことで、従来より柔軟で合理的な設計が可能になった点は大きな前進だと思います。
まとめ
採光のない居室は、原則として不燃材料または耐火構造で区画が必要。
ただし、国の告示で定める条件を満たせば、区画の義務が緩和される。
緩和規定は2種類あり、どちらか一方を満たせばOK。
元政令市職員(行政庁) × 確認検査機関の経験者である一級建築士・建築基準適合判定資格者。
建築基準法を中心に、関連する行政法や民法の仕組みも含めて、横断的にわかりやすく解説しています。
▶ 運営者情報を見る



















