「屋根と柱があれば建築物になる」。建築基準法を学び始めたとき、ほぼ最初に出てくる“常識”です。では、ここで素朴な疑問です。屋根も柱もそろっている五重塔は、当然「建築物」なのでしょうか。
見た目だけでいえば、五重塔は立派な建築物に見えます。屋根があり、柱があり、土地に定着しています。多くの人が「建築物だ」と感じるのも、自然な感覚だと思います。ところが、建築基準法の世界では、少し異なる整理がされているようです。
なぜ五重塔は例外的に扱われたのか
五重塔は、建築基準法上「建築物」ではなく、「工作物」として扱われているようです。この考え方は、昭和26年に建設省が示した通達に基づくものです。
当時の通達では、五重塔のような社寺に設けられる塔について、その使用目的が宗教的に特異であることから、一般の建築物とは性質が異なるものとして整理されています。その結果として、五重塔は建築物ではなく、「工作物として取り扱う」、という整理がされたようです。
ここでのポイントは、「屋根と柱があるかどうか」だけで、機械的に判断していない点です。建築基準法の解釈では、用途や性質、歴史的な背景まで踏まえて整理されることは、実務上あまり多くありません。五重塔は、そうした点が考慮された、例外的なケースといえるかもしれません。
五重塔の取扱い
昭和26.12.22 建設省住発第675号
建設省住宅局員から広島県建築部長あて回答
(照会)
三重塔或は五重塔については、法第21条による高さの規定は如何に取扱ってよいか。(回答)
社寺建築としての三重塔或は五重塔については、塔の使用目的が宗教的特異性に基くものであるから、これを法第2条第1項にいう建築物と見做さず、令第138 条第3号に掲げられている高さが4mをこえる装飾塔、記念塔その他これに類するものの「これらに類するもの」とし、法第88条の規定にいう工作物として取り扱われたい。
