建築設計をしていると、「がけ条例」に悩まされた経験がある人も多いのではないでしょうか。特に木造住宅の設計では、杭基礎を採用することはあまり現実的ではありませんし、鉄筋コンクリートの待ち受け擁壁を設けるだけの予算や敷地の余裕がない場合も多いものです。そのため、がけの存在によって建築計画に大きな制約が生じるケースも少なくありません。
一方で、実は日本には「そもそもがけがほとんど存在しない行政庁」もあります。
その違いを視覚的に確認できるのが、国土地理院が公開している「陰影起伏図」です。陰影起伏図とは、地形の凹凸を影のような濃淡で表現した地図で、土地の高低差を直感的に把握することができます。
例えば横浜市の陰影起伏図を見ると、細かな陰影がびっしりと広がっています。
クリックで拡大 こちらは横浜市の陰影起伏図です。陰影の濃淡によって、土地の高低差が分かります。画像を見ると、細かい陰影が多く、起伏のある地形であることが分かります。台地と谷が入り組んでおり、住宅地の中にも高低差が多く存在していることが読み取れます。こうした地形だからこそ、横浜市ではがけ条例が設計実務に大きく関わってくるのです。
これは台地と谷が複雑に入り組んでいることを意味しており、住宅地の中にも急な高低差が多く存在することが分かります。実際、これらの地域では宅地造成によってできた擁壁や斜面も多く、がけ条例が設計実務に与える影響は小さくありません。
一方で、関東平野の内陸部などでは、陰影がほとんど見えない地域もあります。
クリックで拡大 こちらは山手線の内側にある千代田区と、スカイツリーのある墨田区周辺の陰影起伏図です。千代田区を見ると、高低差がある地形であることが分かります。一方で、墨田区周辺はほとんど陰影が見えません。これは地形が非常に平坦で、高低差がほとんどないことを示しています。実際、この地域は荒川や隅田川によって形成された低地で、広い範囲がほぼ同じ高さの土地になっています。同じ東京都内でも、地形の違いによって高低差の状況が大きく異なることが分かります。
これは広い範囲で高低差が少なく、地形が非常に平坦であることを示しています。こうした地域では、そもそもがけ条例がほとんど問題にならない場合もあります。
普段は条文や条例ばかり見てしまいがちですが、地形そのものを眺めてみると、その地域でなぜ特定の規制が必要なのかが見えてきます。設計や審査でがけ条例に悩んだときは、一度、陰影起伏図を眺めてみるのも一つかもしれません。
こちらは大阪市と奈良県生駒市の陰影起伏図です。
大阪市を見ると、陰影がほとんどなく、地形が非常に平坦であることが分かります。大阪平野に位置しており、広い範囲で高低差が少ない土地が続いています。
一方、生駒市は陰影がはっきりと現れており、起伏の大きい地形であることが一目で分かります。生駒山地の斜面に沿って市街地が広がっているため、住宅地の中にも急な坂や斜面が多く存在します。
このように陰影起伏図を見ると、都市ごとの地形の違いが非常に分かりやすく表れます。同じ関西圏でも、地形条件は大きく異なることが確認できます。



